発達障害のあるお子さんにとって「分かりやすい・受け入れやすい伝え方」があります。
親子のアタッチメントと信頼関係を築き、視覚支援、ABA療育(応用行動分析)等をベースに、その子に合った声かけなどで、自己肯定感を高める接し方を意識していくと、だんだんと怒らなくても伝わるようになっていきます。
■ほめる・認める・話を聴く
発達障害・グレーゾーンの傾向のあるお子さんは、特有のこだわりの強さや興味・集中力の偏り、不器用さ、感覚の敏感さ・・・等の理由から「ワガママ」「空気が読めない」「周りに合わせられない」などで、家や学校でついつい怒られる回数が多くなってしまいがちです。
その結果、自信を失ってしまうと、無気力になったり、周囲とトラブルが増えたり、より深刻な二次障害の状態になってしまう可能性もあります。
まずは「登校できた」など、一見当たり前のようなことでも「よく頑張ったね!」と、何気ない日常の努力を認める声かけをしていきます。また、「学校イヤだ!」「◯◯くんはキライ!」などのネガティブな感情も、まずは否定せずに受け止め、「うんうん」「そうかあ〜、〇〇が嫌なんだね」など、共感的に相づちを打ったり、台詞を復唱しながら話を聴いてあげる(傾聴)ことで、親子の信頼関係の土台を築いていくことができます。
そして、できないことのみに注目せず、できていることのほうに意識的にフォーカスします。 例えば、友だちを叩いてしまったら、行動だけを「叩くことはやめて」と止め、やめた時に「やめれたね」と、できたことをフィードバックします。
また、多動性のある子や感覚過敏のある子は特に、できる範囲で、意識的にスキンシップを多くとるように心がけると、その子なりに落ち着いてくるかもしれません。
「自己肯定感」を高める接し方を心がけ、親も子も、ひたすら忍耐・ガマンをするのではなく、「その子に合った伝え方」を工夫して、なるべく怒られる回数を1回でも2回でも、減らせるようにしていくと、問題行動が落ち着いて、こちらの話も伝わりやすくなります(関連Blog「声かけ変換/声かけ変換表公式まとめ」)。
■伝わる工夫・見える化(=視覚支援)
視覚優位の特性がある子は、耳で聞く情報よりも目で見る図やイラスト、箇条書きの文字などの情報だと理解しやすいため、よく言いがちな小言や注意は、肯定的な表現で紙に書いて貼っておくだけでも、日常的な叱責や不注意を減らすことができます。
生活・学習面やソーシャルスキルを身につける練習でも「見える化」することで、理解がすすみ、学びやすくなります。(詳しくは「生活の工夫」他参照)
そして、強制的な「指示・命令・禁止」は極力避けます。否定的な情報は入りにくく、かえって問題行動を強化してしまいます。廊下を「走るな!」ではなく、「ゆっくり歩いてね」など、肯定語で「やっていいこと」を伝えると、受け入れやすくなります。
どうしても気になる行動には「お母さん、それはイヤだな」「◯◯くん、悲しい気持ちになるんじゃないかな?」など、「私は◯◯と思う」というIメッセージで伝えたり、相手の気持ちを代弁して伝えたりします。
命に関わる危険なこと、他人の大きな迷惑になることなどは、ビシッと注意することも時には必要だと思いますが、予め、一覧表などで判断基準を示し、「こういうことをしたら、注意するよ」という線引きをしておくといいかもしれません。
また、ASD(自閉スペクトラム症)や、ADHDのあるお子さんは、その子の興味・関心に合わせて説明すると理解しやすくなります。
「ちょっと」や「だいたい」など、曖昧な表現は分かりにくいので、「あと1分待ってね」「この線からここの線までの間に並ぼう」など、具体的に伝えると動きやすくなります。
相手のきもちや、抽象的な「人の迷惑になる」なども、図・リスト・表・数値・スケール、写真・動画・イラスト等で説明したり、合理的に「ソン・トク」や「メリット・デメリット」で説明すると、理解しやすいかもしれません。
例えば、負けず嫌いでゲームなどに参加したがらない子の場合には、「負けた時にどうしたらいいのか」がイメージできずに不安に感じている可能性もあります。「負ける可能性が50%くらいあるよ」と予め伝えたり、「もし負けても◯◯はできるよ」など、できることを伝えて、納得できる場合もあります。(関連Blog「ジャンケンフローチャート」)
■望ましい行動を強化し、できた!を増やす
ABA(応用行動分析)療法では、「望ましい行動ができたら、ほめたりご褒美を与え、強化していく(強化子、好子)」という手法があります。
更に、ポイント手帳などを使うと視覚的に分かりやすく、「登校できた」「宿題をやれた」など、一見当たり前のようながんばりでも、できたらシールやスタンプを与え、貯まったらご褒美と交換、などにすると、少しだけ我慢できることもあります。
また、課題のハードルを下げて、「できた!」を増やして記録していくと、自信をつけていけます(関連Blog「できた日記WEB」)。
発達障害のある子どもの自己肯定感を高めるためには、まず、こちらのほめラインの基準を下げます。
例えば、漢字書き取りの宿題を「丁寧な字で姿勢よく書き、6時までに終わる」だと、「できた!」は、なかなか達成できません。
ほめラインを下げ、「丁寧な字で1行だけ書けた」「なぐり書きでもとりあえず最後まで終われた」「6時までに少しだけ取り組みはじめた」など、十分ではなくとも、少しでもできたことや、取りかかったやる気だけでも、ほめ、認めていきます。
更に、課題をスモールステップに分けると達成しやすくなります。
例えば、「縄跳びができる」という課題も「縄を回す」→「その場で飛ぶ」→「縄を回してまたぐ」...と、課題を小分けにして、ひとつひとつ段階を踏んでいくといいようです。
親や支援者は、子どもの苦手な「作業」や「行動」に注目すると、今のその子に合った声かけやサポートが見えてきます。「努力ややる気が足りない」など、精神的な面を責めずに、「ひょっとして、この動きが苦手なのかな?」など、つまづきの原因部分に目を向け、問題を小さく分解し、「では、どうしたらできるか」の工夫を考えて接していくと、少しずつ「できた!」を増やしていけるでしょう。
自己肯定感を高めることを接し方の中心に置き、「伝わる声かけ」やその子に合った接し方のコツをつかんでくると、「言っても言っても分からない子」がだんだんと「話せば分かってくれる子」になり、育児のハードルもぐっと下がって、親もラクになっていきます。
関連Blogタグ:#接し方のコツ #声かけ変換 #ペアレントトレーニング