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子育てこそが、人生最大のリスキリング

執筆者の写真: 楽々かあさん(大場美鈴)🇯🇵楽々かあさん(大場美鈴)🇯🇵

更新日:2024年5月6日

SNSや報道等で、首相の国会答弁での「子育て中のリスキリング」について議論されているようですが……メディアによっては、「育休中」と「育児中」という言葉を(敢えて?)混同して論じて、小さなお子さんの親(主に母親)の不満の声のみを集めて報じているような印象も受けます。

(質問者は「産休・育休」と言ってますが、首相は「育児中など」と返しています。私は誰の味方という訳でもありませんが、事実誤認をもとにしたアンフェアな批判って、すごく気になっちゃう)


確かに、子どもが小さな乳幼児期の「産休・育休中」に限った話であるのであれば、本当に本当に、寝る間もなく、気が休まらず、片時も目を離せないので、「そんなことをしている暇はない」という批判なども実感として非常によく分かります。

スキマ時間にはちょっとでも寝るか、息抜きしたほうがいいです、ホント。

ですが、ごく少数でも、ガッツのある方のニーズもあると思います(でも、産後あまり無理をすると更年期がちょっとしんどいかもしれないので、ほどほどに……)。


ただし、「育児中」の話であれば、子育てというのはもっともっと続い期間、いつか子どもが自立するその日まで10年20年と続く、スパンの長〜いものですよね。

子どもがほどほどに手のかからなくなったタイミングで(この時期は子どもの個性や人数、周りの環境等によって、人それぞれですけどね)、元の仕事に復帰したり、新しい仕事を始めたりを希望する方にとっては、知識をアップデートしてブランクを埋めたり、資格を取ってよりよい条件で仕事を探すためにも、必要な後押しなのではないかと思います。


実際、うちの子が幼稚園時代に、何人かのお母さん方は調理師免許や医療事務、各種インストラクターなどの資格を取って、小学校に上がったタイミングで本格的に仕事を始めて、今バリバリ稼いでますよ(私自身は、そんな余裕はまだまだ作れない時期でしたが……)。

あと、学校の先生などは、育休期間を数年単位でしっかり取って、その間に研修受けまくったり、発達障害対応や特別支援教育などを個人的に熱心に勉強してくださる方もいます。


……なので、首相の国会答弁は子育て中の親全員に「寝る間も惜しんで学べ」と強制しているわけでもないですし、やる気のある方向けに一定のニーズはあるのだから、そこまで批判されるようなことなのかな? と、個人的には思っています(条件に当てはまらない方は、無理に受け取らなければいいだけですし、私はがんばりたい方を応援してあげたいです)。


さて、ここからは、話題の件とは直接関係なしに、「子育て」「リスキリング」「学び直し」といったワードからの、ただの私の連想ゲームのようなことを、つらつらとお話しますね。


私は「子育てこそが、人生最大の学び直し」のチャンスだと、自分自身の経験から痛感しています。


……っていうか、学び直さないと、うちの子達を育てられなかったのです。


子育てというのは、それまでの自分の人生で培ってきた知識と経験を総動員して、それでも足りない部分は学び直して、それでも難しいときには人に頭を下げて教えと助けを乞い、子どもと同時進行で自分自身を育てながら、時間をかけて「親」になっていくものだと思っています。


私は最初の子が生まれた時、入院していた総合病院のベッドの上で、「シアーズ博士夫妻のベビーブック」という分厚い図鑑みたいな育児書を読みこんでいました。(→Amazonで見る 完全版

看護師さんは「熱心ですね。でも、少し休んだほうがいいですよ」と気遣ってくれましたが、私は目の前の未知の生き物を前に、子どもを生んだその日から「今日からアナタは親です、子育てガンバ☆」と放り出されても、どうしていいかわからなかったから。

身近に気軽に頼れる人もなく、誰も赤ちゃんの育て方なんて、教えてくれなかったんだもの(学校の家庭科や保健体育ではちょっとは触れていたかもしれません。覚えてなかったですが……)。


それから、小さな子とのスキンシップや愛情の伝え方などの基本的なことも、文字情報から学び直しました。

私自身の亡き両親は、母は仕事で多忙過ぎて、父は心の病がある人だったので、親との適切で十分な関わりがやや不足したまま育ち、自分自身の記憶からは、あんまり参考になるような情報は少なかったので、足りない部分は後から学んで身につけたんですね(関連blog「子どもを安心させる声かけ・行動」

(まあ、昔の親の子育て知識・経験の中には、今では科学的に間違っているとされることもあるので、身近に頼れる祖父母がいる場合も、学び直したほうがいいと思います)


長男が入園する頃には、周りのお母さん達は続々と仕事に復帰したり、パートを始めたりするようになりましたが、好奇心が強すぎる長男は片時も目が離せず、下の子達も次々生まれ、私にはそんな余裕は一切ありませんでしたし、子育てもうまくいかないことが多かった。

一般的な育児書はたくさん読みましたが、本のとおりにはいかないことばかり……。

公園などでのママさん達とのコミュニケーションも苦手で、下の子を抱っこしながら、危なっかしい長男を追いかけて終わりで、悩み事も多かったのですが、孤独な子育てを誰にも相談できず……本がママ友・相談相手でもありました。


ただ、子どもが夢中になっていることを一緒に楽しむことが、自分の息抜きにもなっていたので、いろんなカルチャー&サブカルチャーにそこそこ詳しくなりました(元々好きなジャンルも)。

長男が大好きだった機関車トーマスから始まって、仮面ライダーや戦隊ヒーロー、スーパーマリオ、カービィ、ディズニープリンセス、妖怪ウォッチ、オレカバトル、ベイブレード、ポケモン、マインクラフト、戦国武将、コロコロコミックからの少年ジャンプ、鬼滅の刃、スパイファミリー……etc.etc。


最近は、オンラインゲームや、ボーカロイド、VTuber、ネット漫画、ラノベ小説とか、アラフィフのおばちゃんはとてもついていけませんが(子どものほうも「母ちゃん無理に首突っ込まなくていいよ」って感じです……)、それでも小さな頃から子どもと一緒にハマりながら、一通りのリベラル・アーツ(?)を学び、教養を深めたおかげで、子ども達が思春期になった今でもいろんな雑談ができて楽しいので、当時のような孤独感は感じません(相変わらずママ友いませんが……)。


そして、長男が小学校に入学し、「発達障害」という言葉に出会ってからは、著書や取材等でお話している通り、とにかく独学で猛勉強しました。

……でも、最初は平易な言葉で書かれたイラスト付きの子育て本ですら、読んで理解するのにすごく時間がかかりました。時間や心理的余裕がないだけなく、長らく子育てに専念していると言語理解のブランクのようなものが出来て、学び直しへのハードルがどんどん上がっていくようにも思います。


でも次第に、親向けの療育本や当事者の手記から、先生・支援者向けの特別支援教育、学生・研究者向けの児童・発達心理学、カウンセラーなど対人援助職向けの本なども読めるようになり(ここ数年は、塾なし中学受験のために大量の参考書なども)、子育てに行き詰まる度に、その都度その都度、必要に迫られて本を読んでは実践し、うちの子の個性や家庭事情に合わせてアレンジ・軌道修正を繰り返してきました(おかげで、私自身も辞書みたいな本を3冊出版できました)。


それでも、「うちの子」について、ドンピシャで書かれている本は一冊もなかったので、最終的かつ本質的には、目の前の子ども達が子育て学の生きた教材であり、私に直接「生き方」の学び直しをレクチャーしてくれた先生でした。


(我が子の子育て法が本を読んでもわからない時は、とにかく子どもをよく観察し、話を丁寧に聴き、「どうしたい?」「どうして欲しい?」「どうしたらいいと思う?」など根気よく訊ねつつ、本人に具体的に教えてもらうのがいいでしょう)


子育てというのは、それまでの自分の常識や固定概念などを見つめ直し、親自身の未学習・誤学習を穴埋めしながら軌道修正し、時々痛みを伴いながらも親のキャパシティをグリグリ拡げて、完璧さを諦め、理想を妥協し、ほどほどで手を打つことを覚え、他人と自分の不完全さを許容できる人間になるための、人生最大のリスキリング・チャンスだと思います。


私は、初めて親になったその日から、今日まで17年間以上、ずーっと学びっぱなしです。


もし、今子育てに専念してがんばっていて、子どものお世話で手一杯で、スキルやキャリアアップのための勉強なんてとてもできません!って方は、今はその子育てを一生懸命やっていけば、必ずなにかのスキルが身につくと思いますよ。

実際、子育てをほぼ終えたであろう、うちの近所のスーパーのレジ打ちのおばちゃん達は、本当にすごいですよ、人として。コミュ力、気配り、寛容さ、トラブルの処理能力(&受け流す力)……とか。


日中、小さな子どもと二人きりで過ごしていると、世間から取り残されていくような気になる時もあると思うので、なにかしていないと不安を感じるかもしれませんが……。


未知の生物である「子ども」という存在に、真剣に向き合って、付き合って、寄り添って、時々失敗と反省を繰り返して、子育てキャリアを積んできた方は、きっと、どんな仕事をしても大丈夫だと思うので、今の経験に自信を持って下さいね(身体だけは、無理せず……)。


……かく言う私も、小さな頃はかなり手のかかったうちの子達も、ようやくそれぞれ成長し、そろそろ子育てのゴールが遠くのほうで朧気に見えてきたので(幻かも?)、一般的な意味でのリスキリングにも関心はあります。


現在高2、中3、小6の子ども達は物価高騰の折に食べ盛りの上、長男は来年大学受験を控え(多分)、冗談みたいに食費・教育費・光熱費がかかりますし(冗談であれ!)、私がちゃんと子離れするためにも、今からでも本当に自分のために学び直して収入UPにつなげて、子ども達が巣立った後でボーッとしないようにしたいです(定年後のパパと家に二人きり生活も気まずくなりそうだし!)。

その時もし、公的な何かしらの援助があれば助かるよなー、と素直に思います。


私の母も50代になってから運転免許と調理師免許取りましたし、伯母は退職後、なんと70歳を超えてから海外の大学院に留学し、物理学の博士号を取得しました。


いくつになっても学び続けることはできるんですよね。

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