楽々式サポートブックの書きかた・渡しかた
「楽々式サポートブック」は主に、通常学級や特別支援学級在籍の発達障害のお子様を、学校と連携しながらサポートしていくことを想定して制作致しました(どなたでも無料ダウンロードできます^-^)。
担任の先生に、お母さんの育児テクニックを直伝し、できる範囲でのサポートをお願いしていくには、どんな風に書いて、どう渡したら良いのか、楽々かあさんなりのコツをまとめてみました。(私も手探りでやっていますので、必ずしも「これが正解」ではありませんこと、ご理解頂けると幸いです^-^;)
※グレーゾーンのお子さんなど、より簡易的に特徴と配慮のお願いを伝える「サポート・シート」の作成例をページ下方に追加致しました。
記入例のサンプル(スライド)
付録「よくある困りと対応例」カード
書きかたの心得
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グチ・苦労話・親の想いは書かない
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「今」「学校で」「特に大事なこと」に絞る
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必要なものだけプリントする(全部埋めなくてもいい)
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具体的に、事実を簡潔にまとめて書く
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子どもを「行動」「困り」でみる
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ポジティブな情報を必ず入れる
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客観的な意見を入れる(医師・カウンセラーなど)
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誰かに見てもらう
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何度も書き直す・修正する
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子ども本人にも確認してもらう
渡しかたの心得
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継続的・長期的に関わってもらえる先生と相談する・渡してもらう
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先生に普段から感謝の気持ちを伝え、信頼関係を作っておく
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子どもによい変化があれば伝えていく
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期待どおりにいかなくても、自分でできる具体的な方法や別のアプローチを考える
「サポートブック」を渡す目的は我が子をサポートして貰うことです。と、同時に、支援者である先生もサポートしていくもの、という視点を持って作って頂くと、学校と家庭がお互いにサポートし合う、良好な連携関係につながって行くと思います。
特に他のお子さんのことでも忙しい、通常学級などの先生にとっては「負担が大きい・重い」と感じられてしまうと、結果的にサポートブックを活かすことができなくなる可能性があります。ですから、相手にとって受け入れ易い内容であるか、具体的に参考になるものであるか、客観的に吟味しながら内容を絞って書くと、実用的なサポートブックになっていくと思います。
親は、今、我が子が心配な状況である場合は特に、「分かって欲しい」という想いがどうしても強くなってしまいがちです(私もそうです!)。「親の想い」は、ママ友さんや親の会、スクールカウンセラーさんなどに、一旦吐き出させて貰った上で書くか、何度も見直し、書き直して、事実と具体案を書いていくことをおススメします。(どんなに削っても、親の想いはにじみ出てしまうものですしね)
そして「親の一方的な思い込み」などと受け取られないよう、できるだけ客観的な意見や資料を入れるといいようです。医師の意見や知能検査の結果をまとめたもの、または実物コピーを添付したり、誰かの意見を聞きながら作成するようにします。育児サークルなどで、グループワークで作ってみるのもいいと思います(私はスクールカウンセラーさんにチェックして貰いました^-^)。子どもの好みや人間関係なども変わり易いので、本人に聞きながら確認します。
コミュニケーションの手がかりとなる情報や、少しでもできていることに注目し、本人のいいところ、頑張れるところなどのポジティヴな情報は必ず入れます。ほめる目線を下げ、いいところに目を向ける練習は親にとっても育児のプラスになります。
子どもの心配な面については「行動と困りでみる」ようにします。
「ワガママ」といった性格的な表現は避け、どんな具体的な行動が心配なのか、その背景にはどんな発達上の困りがあるのか、を書いていきます(分からなければ自分で調べたり、医師などに意見を聞いていくことも大事な過程です)。
そして、対応の「実例」「具体例」を挙げます。
「テクニック集」はお母さんの家庭での育児テクニックのアイデアを、先生などに直伝するためのものです。「テクニックカード」のフォーマットを必要枚数プリントして、ご活用下さい。
声かけなどもできるだけ具体的な台詞を書き、実際に家で取り組んでいることや工夫で、学校でも応用できそうなものがあれば、写真を裏面に印刷したり、実際の支援ツールを添付したりするといいでしょう。カードの形式にこだわらずに、臨機応変にアレンジして下さい。(但し、対応方法はあくまで「一案」「参考アイデア」です。家庭でのやり方は、学校ではそのまま取り入れるのは難しいこともあるので、実際の状況に合わせて、先生の判断にお任せする気持ちでお願いしましょう)
こうすると、支援者も対応を考えやすい上、子どもを客観的に見つめ、理解を深め、具体的に対応を考えてゆく、という視点を持つことの親のペアレントトレーニングにもなりますので、もしサポートブックを学校に渡す予定のない方でも、一度作ってみられると子育て力がUPしますよ(^-^)v
細かな気がかりへの対応なども全部詳細に書くと、「大変そう」という印象になる可能性があるので、巻末付録用に作成した「よくある困りと対応例」カード(4種)に簡潔にまとめましたのでご活用頂くか、資料等のコピーや抜き書きなどで、対応の一覧を添付すると良いと思います。その他、視覚支援ツール等があれば、そのまま使えるものは一緒に渡すといいでしょう。
書いたカードは、ポストカード・ケースなどに入れてまとめ、ラベルを貼っておくと、保存・参照しやすくなります。
※楽々式サポートブックは、後からの追加修正が容易なため、基本手書きでの記入を想定して作っておりますが、PCでのテキスト入力をご希望の場合、ダウンロードしたpdfファイルにテキストを加筆するには、以下のような方法があります。(外部リンク)
「楽々式サポートブック」は必要な部分だけ印刷して使うことができるので、いくつかの具体案や子どもの興味などを伝えるために、数枚だけピックアップして担任の先生や塾の先生に手軽に渡す、という方法もあります。
しかし、進級等で担任の先生が変わっても支援のノウハウが活かされるように、継続的なサポートをお願いしていきたい場合、まずは、特別支援コーディネーターやスクールカウンセラーなど、発達障害に理解の深い先生にアポイントをとって「サポートブックを作って渡したい」旨を相談し、内容をチェックして貰うと良いと思います。
新年度の担任の先生に活かして頂きたい場合、4月中の早いうちに面談等のアポイントを取ると、早めの対応で、新しい環境への段差を和らげることができますが、それ以外の時期でも状況次第で柔軟にご活用下さい。
渡す際も、できれば管理・指導的立場の先生に同席して頂けると良いでしょう。これは、継続的なサポートをお願いするのと同時に、なるべく多くの人に関わってもらうことで、担任の先生一人に過大な負担を強いることを避けるためでもあります。
それでも、学校側の理解や支援体制、先生の方針などによっては、必ずしも「サポートブック」を好意的に受け取って貰えるとは限りません。特に通常学級在籍の発達障害・グレーゾーンの子たちの場合、他のお子さんとの兼ね合いもありますから、期待どおりの支援に結びつかない、といった可能性もあります。
ダメ元でトライ&エラーです(^-^)
もし、学校側の対応が期待どおりでなかったり、うまく受け取ってもらえなかった、活かしてもらえなかった、としても「では、現状で自分にできることは何だろう」と考えてゆけばいいんです。学校で対応できないことは、外部の相談先や民間の支援機関などの力も借りてみたりしながら、できることから一歩一歩進めばいいんです。親がそうやっていく過程で、子どもの理解者・支援者を徐々に増やしていくことができます。
ひと目見ただけでは分からない発達障害のある子や、グレーゾーンの子たちの困りやその子に合った対応・接し方・教え方は、具体的に伝えなければ分からないことも多いのです。過剰な期待をし過ぎず、ダメ元で親が一歩踏み出すことで、結果に関わらず、得られるものは多いと思います。
親と先生が良い連携関係を築くためには、できるだけ日頃のコミュニケーションで信頼関係を作っておくのがいいと思います。いつも感謝を伝え、もし、先生がちょっとでも子どものために工夫したり、いいところを見てくれた時は「すごく嬉しかったようです」「とても分かりやすかったようです」など、フィードバックします。子どもに良い変化が見られた時は「おかげさまで最近小さな文字を頑張れるようになってきました」など、折に触れて伝えていきます。小さなことでも、感謝されると嬉しいのは子どもも親も先生も同じですよね(^-^)
子どもの発達課題に合わせて適宜カードを追加・修正していく場合もあります(詳しくは記入例をご参照下さい)
また、お子さんが安定してきて、特別な配慮が必要でなくなってきたら、サポートブックは返却して頂くのが良いと思います。
先生と保護者が連携しながら、ひとつずつ対応していけば、子どもも、先生も、親も、必ず前進できますからね(^-^)
以下、「楽々式サポートブックについて」より抜粋。
「発達障害のお子様への対応は、保護者と支援者がお互いにサポートし合うことで、本人のサポートにつながります。困ったこと・心配なことがあれば、その都度課題を共有し、ひとつひとつ具体的に対応していくと、必ず落ち着いていきます。
但し保護者・支援者が、個人でできる範囲を超えて頑張りすぎると結果的に子どもの支援ができなくなります。必要に応じて、校内のチーム援助や外部の協力機関、相談先等、サポートする側もサポートされるように、ご助力・ご協力頂けますよう、関係者様にお願い申し上げます。
サポートブックによって、子ども・保護者・支援者の全てに対して、理解と支援の手が差し伸べられるよう願っています。
2015.1. 楽々かあさん」
サポート・シート
(sample)
グレーゾーンの子などへのさり気ない配慮を、箇条書きにして、簡易的に伝えるための例。面談などの際に、参照しながら話すと、要点が分かりやすくなります。
※Sample例ですので、このままお使いにならないよう、お願い致します。あくまでご自身で作成する際の「参考」としてご活用下さい
※Sample例の内容の無断転載を禁じます
うちでは、発達障害のある長男のことを、小学校・担任の先生に詳しく知って頂き、取り扱いのコツを伝えるために、「サポートブック」を作り、毎年渡して連携してきました。サポートブックとは、一体どんなものなのか、何を書いたらいいのか、どんな風に渡したらいいのか…そして、実際のところどうだったのか、もし、うまくいかない時にはどうしたらいいのか…
重版!
「発達障害&グレーゾーン子育てから生まれた 楽々かあさんの伝わる! 声かけ変換」
著者・大場美鈴(あさ出版)
ロングセラー
「発達障害&グレーゾーンの3兄妹を育てる母の毎日ラクラク笑顔になる108の子育て法」
著者・大場美鈴(楽々かあさん) 監修・汐見稔幸先生(ポプラ社)